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就任挨拶

会長 加山恒夫

 東日本大震災という国難とも言うべき非常事態の中で耐火物技術協会会長に就任することになり,緊張感と責任感を痛切に感じております。そして,この様な状況下であればこそ,社会の下支えとしての役割を担っている耐火物業界の技術力を,皆様とともに振興し発展させていきたいと考えております。皆様からのご協力とご支援を賜りながら,協会運営を着実に行い,更なる発展を期してまいります。

本協会は昭和21年に創立され,今年で創立65周年を迎える伝統のある技術協会です。これまで我々耐火物業界と,お客様である各種産業の,耐火物に関わる技術の中核機関として活動を展開してまいりました。どちらかと言えば産業界が中心の活動が目立っていたことは否めません。しかしながら,最近では大学や研究機関の先生方で耐火物について興味を示していただける例がこれまで以上に増えてきているように感じております。このような大変頼もしい動きを大切にしていきたいと思っております。

耐火物分野を取り巻く状況を考えたときに,まず浮かんでくる言葉は「グローバル化」だと思います。我々が直面する耐火物原料の問題は勿論のこと,鉄鋼業をはじめとする我々のお客様であります各種産業のビジネスは,まさにこのグローバルな展開のまっただ中にあります。とにもかくにも,世界というものを考えていかなければならない状況にあることは間違いありません。しかしながら,昨今の世界的な政治と経済の変化の激しさを見ると,何を拠り所にして物事を判断していけばよいのかまったく分からない,と言っても過言ではないと思います。しかし,この様な状況であればこそ,技術力というものがより一層重みを増してくるものと確信しております。我々は耐火物分野の技術的中核を担う団体として,ベースとなる活動をしっかり継続し,展開していきたいと思います。

耐火物が直面する技術的な課題は何かと考えてみますと,従来からの長寿命化,安定化,低価格化という課題に加えて,最近では,エネルギー問題,環境問題といった問題の重みが一層増大し,なおかつ複合化してきていることに気がつきます。この様なさまざまな問題が積み重なった課題に対しては,これまで積み上げてきた既存の技術に加えて,これまではあまり注意を払ってこなかった別の分野の力も借りた,総合力で立ち向かわなくてはなりません。すなわち,きちんとした要素技術を駆使して着実に道を切り開く人,幅広い知識と視野を持ち多角的なアプローチを試みる人,高い視点から状況を把握し進むべき方向を判断する人,などなど実に多様な人材が必要となってきます。我々耐火物技術協会は幅広く活動を展開してきておりますが,これらの活動を通して,多様な人材の育成に結びつけていきたいと考えております。会員の皆様からの,ご支援,ご協力,アイデアのご提供などをお願い申し上げます。

さて,今年の秋(10/30?11/2)にはUNITECR2011(The Unified International Technical Conference on Refractories)を京都で開催する予定です。この会議は二年に一度開催される耐火物国際会議で,今回は8年ぶりに日本での開催となります。グローバル化,環境問題,人材育成などの新たな課題への取り組み方を考えていく上で,海外の関係者と交流し,刺激を受ける事は,視点や視界を変える大変良い機会だと思っております。会員の皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。

福島の原子力発電所事故の解決が不透明な状況下での国際会議の開催については,さまざまな観点から慎重に検討いたしました。そして現在,予定通りの開催に向けて関係者の総力を挙げて準備を進めております。皆様のご協力とご支援をよろしくお願い申し上げます。

耐火物というものは非常に広範囲な産業を陰で支えており,世界中の人々の生活の基盤を造っていく上でなくてはならないものです。このことを我々の誇りとして,皆様とともに努力を積み重ねていきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます